ペダルの進化
普段なんとなく使っているピアノのいちばん右にあるペダル。
これを踏むと音が伸びるため、単なる「音を伸ばすスイッチ」だと思われがちです。
でも実は、昔のピアノにはこのペダルがありませんでした。
今回は、ペダルが生まれた意外な歴史や、踏んだ瞬間にピアノの中で起きている仕組みを、分かりやすくご紹介します。
1.昔のピアノにはペダルがなかった?

今では当たり前についている足元のペダルですが、モーツァルトたちが生きていた約250年前のピアノにはついていませんでした。
- 昔は「膝(ひざ)」で音を伸ばしていた 当時はペダルの代わりに、鍵盤の下にあるレバーを「ひざ」でグッと持ち上げて音を伸ばしていました。足ではなくひざを使っていたなんて驚きですよね。
- 足に変わった理由は、楽器の「重さ」と「演奏の激しさ」 時代が進み、ピアノが大きく頑丈に進化すると、中の部品も重くなり、ひざで持ち上げるのは大変な重労働になってしまいました。
そこで、体の中でいちばん強い「足の裏」で踏み下ろす今の形に変わったのです。
激しい曲を弾くときも、足で床を踏ん張った方が体がグラグラしないというメリットもありました。
2.ペダルを踏むと、88本の弦すべての「ブレーキ」が一斉に外れる!
では、足でペダルを踏むとピアノの中では何が起きているのでしょうか?
ピアノの弦の上には、指を離したときに音をピタッと止める「ダンパー」というフェルトのブレーキが乗っています。
私たちが右のペダルを踏むと、なんと88鍵すべての弦に乗っているブレーキが一斉に、上にフワッと持ち上がって外れます。
ブレーキが完全に外れるため、指を鍵盤から離しても、弦が自由に震え続けて音が伸びるという仕組みです。
3.いまの電子ピアノと本物のピアノでの違い
「お家の電子ピアノでも、同じことが起きているの?」と思いますよね。
ここでも、本物と電子では仕組みが少し違います。
- 本物のピアノ: ペダルを踏んで1つの音を弾くと、ブレーキの外れた残り87本の弦すべてが、その音に反応して、目に見えないレベルで勝手に「うわーん」といっしょに響き始めます。
- 電子ピアノ: 中に弦が入っていないため、この「まわりの弦がいっしょに響く音」を、コンピューターのプログラムが計算して、スピーカーからリアルに再現して鳴らしています。
最近の電子ピアノはとても優秀で、ペダルを「半分だけ踏んだとき」の優しい響きまで表現できます。
4.濁りのない響きを作るためのペダルの踏み方
ペダルの正体は、すべてのブレーキを外す「響きの解放スイッチ」です。
そのため、ずっと踏みっぱなしにしていると、前の音と次の音が全部ごちゃ混ぜになって音がうるさく濁ってしまいます。
- NGな踏み方:鍵盤を叩くのと「同時」にペダルを踏み込む 新しい音を弾くのと同時にペダルを踏むと、前の古い音が消えきる前に次の音と混ざってしまい、音が濁る原因になります。
- OKな踏み方:新しい音を指で弾いた「すぐ後」に、ペダルをパッと踏み替える 新しい音を弾いた瞬間、指が鍵盤をカチッと押している間に、足元をパッと「上げて、すぐ踏む」という入れ替え(後踏み)を行います。
こうすることで、前の音の濁りを一度リセットして、新しく鳴った音の綺麗な響きだけをピアノ全体に響かせることができます。
まとめ
ピアノのペダルは足で操作しますが、実は「耳と指」を使って演奏するものです。
「ペダルを踏むと、すべての弦のブレーキが外れて、楽器全体が歌い始めるんだ」という歴史と仕組みを知るだけで、濁った音にすぐ気づけるようになり、踏み替えるタイミングが劇的に上手になります。
次にピアノを弾くときは、ピアノの奥で一斉にブレーキが持ち上がる様子をイメージしながら、その豊かな響きを楽しんでみてくださいね。






