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覆面さん、JASRACの「収入アップ」に貢献?

いつもミュージックアカデミー ラファーレの活動にご協力いただき誠にありがとうございます。
3回目となりましたJASRACと音楽教室の判決考察について、本日のテーマは「楽曲の『管理者』」です。
なんだかこの記事のタイトルと一致しないように見えますが、最後までお読みいただければ幸甚です。


音楽教室で使用する「楽曲」の準備

音楽教室に「演奏技術習得」のためにご入校されたご経験のある方、あるいはこれからご入校される可能性のある方へお聞きしたいと思います。
「もし演奏技術を習得したらどの曲を演奏したいですか?」

答えはもちろん人それぞれ。
クラシックにも名曲はたくさんありますし、JASRACの管理する楽曲にも素晴らしい作品が山ほどあります。
そのなかで音楽教室から一方的に楽曲を指定し、押し付けることは一切ありません。

生徒さんからのご要望をもとに、私たちは講師とともにカリキュラムを検討し、その際に所蔵する楽譜を眺めることもあります。
しかし、少なくとも当校にある楽譜や教材は、技術習得のための資料として利用します。

生徒さんには「教材は実費でご購入いただく」ことと「演奏できるようになりたい楽曲があったらお伝えいただく」ことを100%お伝えしています。
その楽曲は「生徒さんが個人で演奏を楽しむ」「無償にて公衆に聴かせる」ものであれば使用料を支払う必要がありません。
しかしプロアマ問わず「ライブやコンサートで有料徴収した顧客に聴かせる」のであれば、それは楽曲の使用料をお支払いいただくべきです。

これまでに何度も書きましたが「主たる目的」によって、その楽曲がどう使われるかが決まるんです。
生徒さんが演奏したい楽曲(の楽譜)は誰が準備するものでしょうか。

音楽教室で使用する楽曲の「管理者」は誰なのか

生徒さんの演奏したい楽曲が決まるまではご理解いただいたかと思います。
それでは、その楽曲を準備したり管理したりするのは誰に当たりますか?
事前に私たち音楽教室が準備するなど不可能ですよね…生徒さんに確認するまでは分かりませんからね。

はっきり言って「音楽教室が主体となって楽曲の管理を行う」ことが不可能なんです。
そもそもカラオケ店のようにそのための機材を準備したり、生徒さんのための教材をすべて想定して準備することができませんし、そんな必要もありません。
カラオケ店はカラオケ機材を用意しないと事業が成り立ちませんし、カラオケスナックの場合はカラオケ機器をお客さんに利用「させる」(それが売上増につながる)から設置するんですよね。

「店側はカラオケ機器を設置して客に利用させることにより利益を得ている」
引用:Wikipedia「カラオケ法理

音楽教室が準備するものは、生徒さんに依頼された楽曲の「指導方法」であり「指導ノウハウ」です。
先程も書きましたが、私たちはカリキュラムを検討するなかで所蔵する楽譜を活用することもあります。
そして当校にある楽譜や教材は、生徒さんの技術習得のための資料として利用し、所蔵楽譜を複製して利用「させる」ことはありません。
(著作権で言う「複製権」の濫用にあたります)

そして、極端な言い回しになりますがその楽曲を使わなくても指導できるんです。
JASRACさんは楽器演奏の指導を受けたことがあるのでしょうか…あ、あるな。
覆面さんが2年ほど受講されたんですよね。

どこからが「演奏」でどこからが「指導」なのか

私は金管楽器を演奏するひとりでもありますが、たとえば楽曲によっては「リップスラー」という技術が必要になります。
でも「リップスラー」そのものの指導は楽曲を使うことってないんですよね。
そして、B管を例にすると「B♭→F」は同じ運指ですが、そのパターンが出てくる楽曲なんで山ほどあります。
「その楽曲じゃないと『リップスラー』を習得できない」なんてありえません。

当然のことながら、それでは効率という観点でも技術の習得という観点でも適切とは言えないので、当校では決してそのような指導をすることはなく、その楽曲の部分を切り出してその手法をお教えすると。
すべてがそうではないですが、例を挙げるとするならばそういう流れでレッスンは進んでいきます。

その際に「はい、ここから先はJASRACさんの使用料がかかります」ってどうやって判断するんでしょうか。
「い、いま演奏したのは「B♭→F」のリップスラーですよ!」って毎回お伝えしたほうがいいのでしょうか。

JASRACの覆面さんとは違い、私は大手教室さんのレッスンを受講したことはありませんが、大手さんの「大人の音楽教室」もそこはさすがに同様だと思いますよ。
「教室の教材にある楽曲以外は指導できません」と標榜しているならともかく、そんな教室に通いたい生徒さんはいらっしゃらないのではないでしょうか。

覆面さん、JASRACにさらなる使用料をもたらす?

JASRACの覆面さんは2年ほどレッスンを受講されたと聞いています。
その「主たる目的」は証拠集め……ではなく、「生徒さん」ですから「演奏技術の習得」です。
その「証拠」を踏まえてではないようですが、上記のリップスラーのような「切り出し練習」のことが判決文にも触れられています。

判決文 P68
しかし、原告らの音楽教室におけるレッスンにおいては、終始、特定の2小節以内の小節のみを繰り返し弾くことはなく、課題曲を一曲通して弾くこともあれば、ある程度まとまったフレーズを弾くこともあり…(以下略)

この「一曲通して」って、生徒さんが希望されて実現するものではないのでしょうか。
先生がJASRACの回し者でない限りは、先生から指示されたとしても「演奏技術の習得」が目的なのは明らかです。

演奏の「主たる目的」はなんですか?
生徒さんは「公衆に聴かせるため」に演奏しているのでしょうか。

先生に聴かせ、先生のアドバイスをもらって演奏技術を習得するために演奏しているんですよね。
覆面さんは「公衆(=他の生徒や先生)に聴かせるため」に演奏したのかもしれませんが、もしそうであれば覆面さんがJASRACに使用料を支払う必要がありますよね。
あ、でもその演奏は無償(むしろ自分が負担している)ので、使用料を支払う義務はありませんね、失礼しました。

いやいや、ちょっと待ってください。
それは演奏主体が「生徒」である前提です。

もし今後、演奏主体が事業者だと確定した場合、この覆面さんが音楽教室で演奏したということであれば音楽教室は使用料を支払う必要があります。
さかのぼって、2018年1月1日から徴収するわけですからね。
(時系列までは把握していませんのであしからず)

ということは、「JASRACの覆面さんが音楽教室に通えば通うほど、JASRACの使用料収入が増える」ということになりますね。

演奏技術を習得できて、覆面調査員としての報酬ももらえて、さらに勤務先の収入アップに貢献…まさに驚愕の徴収システム。
これは覆面調査員の求人募集も捗りますね。

さて、いかがでしょうか。
次回がラストかな…考察だけではなく対案を出せるといいですね。

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